WISCでなにが分かるの?−知能検査の結果を支援に活かすには−

知能検査とは、主に物事の理解、知識、課題を解決する力といった、「認知機能」を測定するための心理検査の一つです。

認知機能については、「勉強ができない!」理由を考える。今、注目されているコグトレとは?の記事でも少しご紹介しました。

知能検査は、地域の発達支援センターや病院、就学前に受けることを勧められることが多いのですが、内容や目的が分からないまま結果だけ知らされて不安…なんてことありませんか?

目的は、子どものこれからの発達支援や学習方法の方向性を決定するための指標として受けることになるのですが、、、

何よりも大切なのは、子どもの得意、不得意分野を分析することで、今後の支援の在り方を、支援者がご本人や家族と一緒に考えることです。

ここでは、児童期に最もよく使われているWISCの内容についてご紹介します。

ウェクスラー式知能検査 WISCとは?

ウェクスラー式知能検査は、児童期や成人期においてもっともよく使われる知能検査です。

被検者年齢に応じて、下記の通り分かれています。
・児童用のWISC(Wechsler Intelligence Scale for Children)
・成人用のWAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)
・幼児用のWPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)

それぞれ改訂が重ねられ、最新版であるWISC-Ⅳは、5歳0か月~16歳11か月までを適応年齢とした児童用の知能検査となっています。

知能検査には、ウェクスラー式知能検査の他にも多くの知能検査があります。
子どもの年齢や特性によって何を用いるかが異なってきます。

・田中ビネー知能検査
 2歳〜成人までを適応年齢とし、主に子どもに使用。知的発達の進み具合や遅れ具合を把握できる。
・日本版 KABC-Ⅱ
 子どもの認知機能のみならず「語彙」「読み」「書き」「算数」の習得度も測定できるため、子どもの指導や教育に役立てることができる。
・新版K式発達検査2001
 「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」の3領域を測ることで、精神機能含めた全体的なバランスを把握することができる。
・DN-CAS認知評価システム
 「計画」「注意」「同時処理」「経時処理」の4つの認識機能を測定することができる。
・コース立方体組み合わせテスト
 非言語性の能力を主に測る知能検査

WISCで測る「知能」とは?

「知能」と聞くと、「頭の良さ」を想像する方も少なくないのではないでしょうか。
「知能」というのは脳の中で情報を集め、整理し、表現する一連の活動のことです。

「頭の良さ」イコール「勉強が出来る子ども」と一括りにはできません。
どのように学んでいるのか、それは子ども一人一人異なります。

WISCでは、以下のような子どものちからを、個々に見る指標となります。

・「考えるちから」
自分の知識から情報を引き出し、予測を立てたり回避するために思考するちから

・「学習するちから」
新しい経験や情報・刺激などから自分の知識として積み重ねていくちから

・「適応するちから」
人間関係だったり、社会性、コミュニケーションによって環境に適応していくちから

それでは、具体的にどのような検査内容か見てみましょう。

WISC検査では下記4項目に分かれて指標が算出されます。

  • 言語理解(VCI)
  • 知覚推理(PRI)
  • ワーキングメモリ(WMI)
  • 処理速度(PSI)

①言語理解(VCI)
・言語理解能力を測定する
・言葉の概念を捉え、言葉を使って推論する能力を測る

例えば…
コミュニケーションの場面で不自然な言い回しをする、
作文を書くときに上手くかけない、などは言語理解の難しさが関係します。

②知覚推理(PRI)
・非言語的な情報(視覚)を基に推論する力を測定する
・新規の情報に基づく課題処理能力を測定する

例えば…
展開図から3次元の形を想像する、
地図をみて目的地に到着するなどは、この知覚推理に関わっています。

③ワーキングメモリ(WMI)
・聞いた(聴覚)情報を記憶に一時的にとどめ、その情報を操作する能力を測定する

あらゆる知的活動(例えば…読書・作文・計算・推論・意思決定・会話)はこのワーキングメモリに支えられており、「注意・集中」とも密接に関連しているため、子どもの学習や行動に大きな影響を与えています。

例えば…
先生から、「算数の教科書の5ページの問題3を10分以内に解きなさい」と一度にたくさんのことを言われたときに理解して取り組む、
算数で繰り上げの計算をしているとき、繰り上がりの数を頭に置いたまま計算をすすめるちからは、ワーキングメモリに関わっています。

④処理速度(PSI)
・単純な視覚情報を素早く正確に、順序良く処理、あるいは識別する能力を測定する

例えば…
黒板の文字が消されてしまう前にノートに書き写せない、
「正しくないものに2つ○をつけなさい。」というテスト問題で、正しいものに○を1つつけてしまうといった不注意をしてしまう、
などは処理速度に関わってきます。

この様なちからをWISC検査では見られますが、被検者の〝すべて〟がわかるわけではありません。

子どもの認知機能を知るには、行動特性や、生活環境への適応能力、コミュニケーションなど、そのほかの様々な情報が必要です。

知能検査は、適切な支援を考えるための指標の一つとして知的発達の程度についてより正確に理解するための検査です。

知能指数の指標となる数値は?

知能検査においてはIQ(知能指数)の値を指標とすることが多くあります。

IQはInteligence quotientの略で、知能のレベルを評価するための標準化された尺度です。
同年齢集団の中で、どこに位置づけられるか示す指標になっており、一般的に平均値を100として比較可能な分類がされます。

  • ~69:非常に低い
  • 70~79:低い(境界知能と言われる層)
  • 80~89:平均の下
  • 90~109:平均
  • 110~119:平均の上
  • 120~129:高い
  • 130以上は非常に高い

この様に、数値で指標が算出されますが、検査では数字が高い、低いをだけを見ているのではありません。
①言語理解(VCI)②知覚推理(PRI)③ワーキングメモリ(WMI)④処理速度(PSI)の各項目の知能のバランスや、検査時の行動・様子も合わせて見ています。

知能検査の結果を支援につなげていくには?

冒頭でもお伝えしたように、知能検査の目的は、子どもの得手、不得手分野を分析して、効果的な支援につなげることが大切です。

そして、この認知機能は、お子さんの障害の有無に関わらず、個別に異なるものであるため、検査結果を知ることはその子にあった発達支援、学習方法につなげていくための大きな手がかりとなります。

知能指数が高くても、それぞれの指標で凸凹があり、学校の勉強方法とあわなかったり、集団になじめなかったり…悩みを抱えているお子さんもいるかもしれません。
また、知能指数IQ70~84である「境界知能」、いわゆるボーダーの子どもたちは、学校の勉強についていけない、集団行動が苦手など、知的障害のお子さんと同じようなしんどさを抱えているかもしれません。

認知機能が弱いと、二次的な問題として、ストレスに対する弱さ、自信の失いやすさ、対人スキルの乏しさにも繋がることもありますので、まずは早期にお子様の弱さに気づいてあげることが大切です。

認知機能を高めるトレーニングには様々ありますが、検査の結果を知ることで、普段の声かけ一つが変わってくるかもしれません。

知能検査は、医療機関や地域の発達センターで受けることができますが、民間の機関でも医療専門職による検査が受けられることもあります。

まずは、日々の生活で子どもの何に困っているのかを専門家、支援者としっかり話し合い、どの検査を用いるか決めることをお勧めします。

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投稿者プロフィール

竹中 佐江子
竹中 佐江子
作業療法士 子育てしてないけど、子どもの可能性に魅了された人
大阪府出身 神戸大学医学部保健学科卒業後、作業療法士として、18年間子どもの支援に携わる。(株)東京リハビリテーションサービス 取締役

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